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2017.02.03 COFFEE PEOPLE ~ Vol.16 馬場圭介 × 大塚博美 ~後編

毎月、各界のゲストとコーヒーを入り口に様々なトークを繰り広げていくCOFFEE PEOPLE。今回は前回に引き続き、スタイリストの馬場圭介さんと、コーディネーターの大塚博美さんのお二人を迎えた対談の後編をお送りします。

業界きってのベテランスタイリストである馬場さんと、日本ブランドのパリ進出の裏に彼女ありと言われる大塚さんは、今年で結婚10年目を迎えるご夫婦です。

今回も、一年の大半を離れて暮らしているというお二人の独自の生活スタイルから、クリエイティブや世相に至るまで、様々な話題を鳥羽伸博と大いに語り合います。ぜひともお楽しみください。

(聞き手:鳥羽伸博(TORIBA COFFEE代表)。写真:石毛倫太郎。構成:内田正樹)

 

クリエイティブと心意気

後半1

(※前編からの続き)

——最初は雑誌の撮影コーディネートの仕事から始めたんですね。

大塚:そう。で、撮影をいっぱいやるようになって。そうしたらある日、菱沼良樹(※“ヨシキヒシヌマ”デザイナー)さんが、パリでショーを1回やったんだけど、どうも現地スタッフと上手くかみ合わなかったから、誰か間を取り持ってくれる人を探しているんだけど、博美さんどう?という話をもらって。

——その頃の良樹さんって、むちゃくちゃ尖っていた頃ですよね?

大塚:そうそう。「ショーなんてやったことないけどいいんですか?」、「ぜひ」みたいな流れでやることになって。そう思うと、私、だいたいやったことないことしかやったことないな(笑)。

——でも経験のある人に頼むリスクもまたあったりするじゃないですか。逆に何も分かっていなくて、最初から一緒に考えるような人のほうがよかったりするパターンもあると思うんですよ。

大塚:あ、それでトランプが当選したのかな?(笑)。ともかくちょうどその頃の良樹さんはいろいろな挑戦をしていた時期だった。下水道でショーをやったこともあったね。私が「下水道ってよくない?」って言ったんだけど(笑)。素人だから思ったことを口にしちゃっていたので。でも、すごくカッコよかったんだよ! 映画が撮れそうな下水道のトンネルでね。プレスの人には「臭いからみんな来ないんじゃないの?」って怒られたけど(笑)。

——で、そのショーは成功したんですか?

大塚:大成功! 下水道パンパンでした。お客さんで(笑)。

——その頃の馬場さんはもう日本でスタリイストの仕事を?

馬場:やってたかな。俺、スタイリストをやり始めたの、30歳からだったからね。結構デビュー遅いんだよ。

大塚:あとは夜のクラブ活動ね(笑)。営業だから。

——仕事に繋がったんですか?

馬場:意外と繋がったね。遊んでいただけなのに(笑)。

——何か夜の世界で会う馬場さんって、すごく……。

大塚:裸?(笑)。

——いや(笑)、きらびやかな感じがして、大御所感が半端ないんですよね。

馬場:何か二日酔いでも仕事できたしね。若かったねえ。

——博美さんはこれまでにいろいろなブランドと関わってこられたと思うんですが、仕事を受ける/受けないを決める判断基準は、何か明確にお持ちですか?

大塚:うーん。

——例えば「お金はあるぞ」とか「ともかくパリで」みたいな人は……。

大塚:それはあんまり好きじゃないな……でもショーにしても撮影にしても、「あなたは何やってるんですか?」みたいな人がチームにいるような、余裕のある仕事はほとんど来ない(笑)。大きな広告だと、すごくスタッフが多かったりするでしょ? でもまあ何でもやります(笑)。あまり断ったこともないかなあ。

馬場:でも基本的には相手と自分が同じ空気感を持っていないと続かないよな。

——ああ、1回はやっても2回目はない、みたいな。

大塚:そうかもね。だいたい断らないけど、話を聞いているうちに、撮影とかショーの本番が近くなるにつれてだんだんと連絡が来なくなって、結局最後までたどり着かないというパターンはあったな。途中で「ちょっとおかしいな?」と思うと、やっぱり自然とそうなるみたい。

——そういう人って、最初だけは調子いいこと言いません?

大塚:うん(笑)。まあ合わない人とは自然と縁がなくなっちゃうのかな。向こうも“この人ダメかな”と思うのかもしれないし。

馬場:こっちが「合わねえ」と思ったら、だいたい相手も合わないと思っている。お互い様で。

大塚:そうそう。お互い様なんだと思う。

——お二人から見て、例えばカッコいいブランドとか、これは世界的に注目され認められるだろうなというブランドの必要条件や何らかの共通項ってありますか?

馬場:難しいな…………ちょっと話が広すぎるな。でも、何だろう、やっぱり要はクリエイティブかどうかじゃねえかな。あと想像力とか。

大塚:難しいけど、例えばここに1枚のジャケットがあったとして、「これ、誰が作ったんだろう?」ではなくて「これはあのブランドかな?」と分かるスタイルを持っていないと勝負はできないかもね。アイデンティティがしっかりしてないと、すでに売れているからこういうコレクションを作った、みたいな人は、海外では勝負できないかもしれない。

——それこそ今の企業ってそこで悩んでいますよね。

大塚:そう。マスでウケようとするあまりに、マスにもウケなくなるというか。でもジョニオ(“アンダーカバー”デザイナー)君とか宮下(貴裕。“TAKAHIROMIYASITA The Soloist.デザイナー”)君もそうだけど、創りたいものを創っているからね。お客さんもよく分かっていて、彼らの展示会では、一番創り込んだ服から買われていくの。

——やっぱりそういうものですか。

大塚:うん。仮に安くしたバージョンとかを作っても、まずは一番濃いのから買っていくね。

馬場:日本とは逆で、誰でも似合いそうな普通のもののほうが売れない。

——そういう服をみんなちゃんと着るんですね。

大塚:着る人は着るね。

馬場:そういう人って自分が買ったら、派手でも恥ずかしがらないじゃん。堂々と着ている。あれがいいよね。やっぱり日本人は恥ずかしがり屋な分、堂々と着ないから余計にカッコ悪く見えるんだよ。似合う/似合わないは関係ない。心意気なんだよ、洋服は。

大塚:「これを着たい」と思ったら、ちっちゃかろうが太ってようが着るじゃないですか、海外の人は。そういう人が通うお店がクリエイションのある服を買い付けるんだと思うし、彼らは才能のあるデザイナーを育てようという意識もあるの。だから本当にクリエイティブなデザイナーはパリコレで勝負したいと思うのもよく分かる。お客さんから違うの。

——それこそ良樹さんがいい例ですが、日本人でも吹っ切れている人はカッコいいものを作りますもんね。

大塚:そう。

——ファッションも建築も料理も、下手にマーケティング至上主義になっちゃうと、やっぱりキレイなのを作っていきますよね。

大塚:何かみんな一緒になっちゃうよね。どこを買ってもいいとなったら、そりゃ安いのを買うよね、みたくなっちゃっているのかなとは思いますね。

——トランプが大統領になったら、世の中も少しは変わるんですかね?

大塚:もうどうせだったら変えてほしい(笑)。

——でも今の状況でトランプになるのと、当時の状況でレーガンになるのってた多分そんなに変わらなかったはずなんですよね。で、レーガンになったじゃないですか。でも思いのほか、そんなに変わらなかった。嫌がっている人のアレルギー反応みたいなのも今のうちはすごいけど。

大塚:昔はSNSがなかったからね。今はイヤな気持ちもSNSに書きこむことでどんどん増していっちゃうから。カナダへの移住サイトもパンクしたんだよね?

——香港が返還された時にカナダに移住したのと一緒ですよね。カナダってよっぽど自由の国なんだなって(笑)。

まあ考えてみたらカナダのスーパースターってニール・ヤングですからね。

一同:(笑)。

——案外トランプは今の時代に合っているのかもしれない。ただ今回の大統領選って、前回の大統領選よりもエンタテイメント性は低かった感じがして。二人のキャラクターは置いといても、何か前回はすごかったじゃないですか。

馬場:黒人初だったからね。

大塚:今回は両方嫌われ者だったし。

——今回は女性初の可能性があったわけですよね。

大塚:だからそれを嫌がっていたアメリカの人も多かったみたいだよね。

馬場:絶対あっただろうね。まあ日本もそうだけど、やっぱり田舎のじいさんばあさんの票で決まるんだね。

大塚:まあそうだね。人口でも老人の方が多いしね。それにおそらく女性候補がいても、奥さんは旦那がいいっていう人に投票しちゃうもんね。「お前、こいつに入れろよ」、「オッケー」みたいな。

馬場:EUもイギリスが離脱して、トランプが勝ったじゃん? もう価値観が別世界に行くよね。

——今までのスタンダードがスタンダードじゃなくなっちゃうかもしれない。

馬場:おもしろい時代だよ。多分今からは。何があっても不思議じゃないしね。でもトランプみたいな大統領はもう今後出ないだろうから、それを体験できるっていうのは考えようによっては貴重かもしれないな。

後半2

夫婦の秘訣は“一心異体”

——博美さんはモロッコがお好きなんですよね。

馬場:第二の故郷って言ってるもんね。

大塚:そう。第二の故郷(笑)。最高だよ。

——モロッコ、僕も好きですけど、いいですよね。

大塚:だって今の時代、東京にいようがニューヨーク行こうがロンドン行こうがパリ帰ろうが大差ないけど、モロッコはマラケシュ空港に降りた途端から、ばーって景色がブッ飛ぶもん。急にインディ・ジョーンズの主人公になった感じ。BGM聴こえてくるもんね。チャンチャチャーンって感じの(笑)。

——昼と夜で街の表情も全く違うし。ご飯も美味しいし。

大塚:美味しい。あとすごいコントラスト。迷路みたいな暗い小道を歩いて、ちっちゃい木のドアを開けると中はパラダイスだからね(笑)。トロピカル植物とお姫様みたいなベッドがあるちっちゃなホテルとか。もう本当に面白い。

——最初に行きはじめたのは?

大塚:もう15年ぐらい前かな。

——その頃、ちょっとモロッコブームっていうかアルジェリアブームがパリでありましたよね。

大塚:フランス人がマラケシュとかで、パティオのある家を一棟買いして、それをプチホテルや民宿みたいにするのが流行り出した頃だった。初めて友達がそういうのを出したので行ったらハマっちゃった。お姫様みたいな暮らしができるのに1万円もかからないんだもん。

——住みやすい/住みづらい的な点でいうと、ここ数年のパリはどうなんですか? 「危ない」とは言われていますが。

馬場:右翼的だよね。

大塚:テロがあって危ないのはたしかにそうで、やっぱり右翼的に移民を排他みたいな流れもあって。山間部というか田舎のほうはみんなそっちに流れているみたい。あとは今の大統領が尊敬されてない(笑)。

——でも大統領、ミッテラン以降って全部ダメですよね。

大塚:うんまあシラクもそこそこだったし。サルコジもねえ(笑)。

——そういう意味ではフランスって各々がインディペンデントな国民だから、どっちでも変わらないっちゃ変わらないのかもしれないですね。アメリカってインディペンデントな振りして、各々が全くインディペンデントじゃない。経済にも巻き込まれる。で、すぐ怒るじゃないですか。「車売れなくなった! ギャー!」みたく(笑)。それにそもそもインディペンデントだったら、ヒラリーVとトランプという二択にはならないでしょうし。

大塚:それもそうだねえ。

馬場:もっといるだろっていうね(笑)。

——ちなみにお二人はご両親からどういう影響を受けて育ったと思いますか?

馬場:うちは普通の国家公務員だったからなあ。郵政省。

だからサラリーマンなわけじゃん。まあ酒は飲んでいたけど、「うわ、こんなオヤジにはなりたくねえな」とはずっと思ってた。もっと自由なのがいいなあと。で、母ちゃんも主婦だったから、このまま熊本にいて一生終わるのはイヤだなと思って、海外に行ったり東京に住むようになったのかな。今では感謝しているけどね。

——で、ひとりっ子で?

馬場:ひとりっ子(笑)。

大塚:ひとりっ子だよ。ちょっと新婚旅行気味に二人でバリへ行った時、素敵なヴィラを借りてプールもついていて、庭の先なんて海なのに、馬場はヴィラのクーラーの真下でずっとゲームしてたからね(笑)。

馬場:覚えてない……(笑)。

——そういえば馬場さんはファッションにどういう経緯で興味を?

馬場:それが分かんねえんだ。自分でも不思議で。小学校ぐらいまでは親から買ってもらったのを着るぐらいだろ? 中学校になっても田舎だからビギもなかったし、野球部で坊主だったから(笑)。オシャレもあまり興味はなかったんだけど、なぜかMEN’S CLUBだけは毎月買ってたんだなよな。まああの頃は雑誌もメンクラぐらいしかなかったし、アイビーに行くか、ヴァンに行くか、ジュンに行くかしか選択支がなかったんだよ、熊本って(笑)。

——馬場さんはどれ派だったんですか?

馬場:最初はヴァンで、そのあとメンズビギ。やっぱり『傷だらけの天使』(※テレビドラマ。主演:萩原健一)を観てヨーロピアンに行ったね。

——やっぱり当時の『傷天』って影響力あったんですね。

馬場:うん。あとは音楽が入り口だった。ビートルズ。

——一番好きな曲は?

馬場:「イン・マイ・ライフ」。

——迷わないんですね。あれ、すごい曲ですよね。

馬場:ピアノのところ、ジョージ・マーティンが自分で弾いてるんだよね。昔は音楽=ファッションだったじゃん。ビートルズにいくか、ストーンズにいくかで、俺はもう迷わずビートルズだった。で、20歳の時にパンクですよ。ピストルズ。

——そうか。夫婦生活が長続きする秘訣って何だと思いますか?

馬場:干渉し合わないこと。もうそれしかない(笑)。

大塚:そうそう、秘訣は離れていることだよね(笑)。一心同体じゃないもん。一心異体だから(笑)。

——参考にならならないなぁ(笑)

大塚:最初は「60になってお互い独身だったら結婚しようね」と言ってたの。

馬場:あ、そうだっけ?

——でもそういうこと言い合って本当に結婚するパターンってなかなかないじゃないですか。

大塚:まあ私は途中でフランス人のところに7年ほど嫁に行っていたし、向こうの離婚って大変だから成立するまで3年かかったし(笑)、パリでは山も谷もいろいろあったけど、それは困りに行ってたから(笑)。

馬場:その頃も日本に帰ると俺んとこ泊まってたよね。だから連絡はたくさん取らないけれど、お互いに何やっているか全然分からないっていう時期はなかったんだよ。

——その当時は、馬場さん、寂しくはなかったんですか?

大塚:だってこの人も若い彼女がいたし。いっぱい。楽しかったでしょ?

馬場:楽しい(笑)。

——現在進行形で言わないでくださいよ(笑)。

大塚:まあ一度しかない人生だから、お互いいろいろな時期があったほうがいいじゃない?

——まあそうですね。博美さんは、今も「困る」がテーマですか?

大塚:うーん、今はあまり困りたくないかな(笑)。歳になってきたから(笑)。モロッコを旅行する程度に困るのがちょうどいいかな。ちょっと新しい景色が見えるぐらいで(笑)。あとは困っている人を見ると放っておけない性分なのかも。で、面倒見も悪くないから一緒にかぶって巻き込まれちゃうという(笑)。まあそういう職業だから。

——でも辛い局面だってありますよね?

大塚:ない。困っているのを解決するのが大好きだから(笑)。

——すごいなあ。馬場さん、本当にいい奥さんをお持ちですね。

馬場:いやいやいやいや!(笑)。

後半3

 

(プロフィール)

馬場圭介……スタイリスト。1958年熊本生まれ。26歳で渡英し、スタイリストの大久保篤志氏に出会う。帰国後、大久保氏のアシスタントを務め、1年後に独立。今日までに数多くのミュージシャン、俳優、タレントのスタイリングを務める。2004年、ナノ・ユニバースと協業でスタートさせた、プリティッシュロックとミリタリーを合体させたブランド“GB”のディレクターとデザイナーを兼任。2007年から2009年には、ユニクロのコラボTシャツ企画に参加した。2011年秋冬からは自身がディレクターを務める“ENGLATAILOR by GB”がスタート。更にDJとしても活躍中。大御所のスタイリストの一人として、日本のファッション界を支える第一任者である。

 

大塚博美……在仏29年。フリーランスのファッションコンサルティング、コーディネーター、キャスティングとして活動中。パリで行われるファッションショー、展示会、イベント等で日本の才能溢れるクリエーターの海外進出をサポートする“パリ母”として知られる。また、日本人フォトグラファーはもちろん、海外フォトグラファーとも世界各地の撮影をアレンジしている。

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