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2018.02.09 COFFEE PEOPLE ~ Vol.24 元谷芙美子 × 山本康一郎 ~ 

毎月、各界のゲストとコーヒーを入り口に様々なトークを繰り広げていくCOFFEE PEOPLE。第24回目はアパホテル社長・元谷芙美子さんと、スタイリスト・山本康一郎さんの登場です。元谷さんはアパホテルの社長であり、PRの顔として、ホテル同様に全国区の知名度を誇る人気者。一方、スタイリストのかたわらでファッション誌において連載も持つ山本さんは、有名俳優からファッションブランドまで、知らない人はいない業界の重鎮的存在です。かねてからそれぞれ鳥羽とは親交があるものの、二人はこの日が初対面。山本さんが鳥羽と共に聞き手に回る形で“アパ社長”とアパホテルの知られざる秘密に前後編で迫ります。まずはその前編からお楽しみください。

(聞き手:鳥羽伸博(TORIBA COFFEE代表)。写真:石毛倫太郎。構成:内田正樹)

 

経営者にとって一番大切な資質はセンスです

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元谷:そう言えば、最近ノブくん(=鳥羽)に会っていなかった数ヵ月の間に、私、“明石家かます”になったんよ。

——“明石家かます”? 何ですかそれ?

元谷:明石家さんまさんの弟子(笑)。さんまさんのテレビ番組に出た時、「明石家かますにしてくれますか?」って単刀直入にお願いしたら、「ええよ~」って言ってくれて。ちゃんとお免状ももらって。

——すごい。さんまさんって原則的に弟子をとられていないのに。

元谷:それを知っていたから、敢えて頼んでみたの。さんまさんのことが大好きで。だって、あんな人いないじゃない? 純粋でハンサムで、台本なしに朝昼晩と喋れるんだよ? 私と一緒じゃない?(笑)。私は宇宙人というか、トットちゃん以上にトットちゃんやから(笑)。それをさんまさんも会った瞬間に分かってくれたみたい(笑)。私、既製品ではないので。

山本:そういう意味ではさんまさんもそうですよね。

元谷:そう。センスもいいしね。真面目な話をすると、やっぱり企業経営者として最も大切なものはセンスだと私は思っているので。何のセンスかと言ったら、まず会社の経営をどうしたいかという、社長本来のセンス。あなたたちはすごい上等のセンスをお持ちやけど。経営者にとって一番大切な資質はセンスです。ここ、書いてね。見出しよ? 私、コピーライターもやっているんだから。

山本:社長は人間としての仕上がりがすごいですね。

元谷:はい、仕上がってますよぉー!(笑)。いまもジェイ・ウォルター・トンプソンという広告会社と付き合っていて、“You’ll be back.”、つまり“つぎも、そのつぎも アパホテル”というコピーで世界戦略に燃えている最中ですからね。でも優しいから尖ってないでしょ? 先は丸いんですよ。失礼やけど、あなたたちの2倍は生きているので。若い時と比べたら少しは人間もまろやかになったし。

山本:僕、いま55歳です。

元谷:あら、お若く見える。35じゃなかったんだ?

一同:(笑)

元谷:でも山中(伸弥)教授のIPS細胞学で言えば、126歳までオッケーらしいからね。弱った細胞を新しいのに繋ぎ合わせたら126歳まで生きられる遺伝子はみんなあるんだって。だから私もまだ志半ば。一緒に頑張ろう。

山本:はい(笑)。社長は毎朝何時ごろ起きるんですか?

元谷:私の本業は本当に主婦なんです。主人(※アパグループ代表。元谷外志雄)が夜11時ぐらいに帰ると「風呂、飯」に始まって、コーヒー出したり、「おい」と言われたら加賀棒茶の冷たいのから、熱いのが欲しそうやと思ったら石田三成並みに熱いお茶を出します。一緒の空間に生きているということが大事なので、夜11時からは代表おひとりのためのクラブのママとしてお仕えしています。で、朝は代表が6時に必ず起きていらっしゃるので、私も 「早く起きて新聞取ってこなきゃ」と起きますね(笑)。

山本:じゃあ睡眠時間は4時間ぐらいですか。

元谷:高校の受験勉強をしていた頃のサイクルでずっと生きている。あ、私すごい勉強フェチなんですよ。大好きなの、勉強が。

山本:53歳で大学に行かれたんですよね。

元谷:そうそう。私は昔、福井県一の進学校にいました。幕末の志士の橋本佐内が作った前身、福井中学が今、福井県立藤島高等学校という一番の名門で。自分で言うのも恥ずかしいけど(笑)。東京大学に毎年、私の学年からも20人近く行ったような、福井県一の、みんなが越境してまで行きたい学校だった。その進学校で、たったひとり、受験しなかったのが私でした。父親が早くに亡くなって、小さい妹も二人いたので、私だけが東京に行って学校行くことはやっぱりできなかった。でも就職した信用金庫で主人にお会いできたので、人間万事塞翁が馬ですね。で、代表と一緒になって、教養と品格をどう備えて社長に昇りつめるかが私の課題になりました。それで2001年、53歳の時に、あらためて大学に行かせてもらおうと思った。代表と「主婦の仕事と会社の社長としての仕事は絶対に手を抜くな。その二つが守れるのなら行っていい」と許していただいて。

——なるほど。

元谷:環境の勉強をしたかったんです。アパという名前はアメリカのランドー社でつけていただいたんですが、AlwaysのA、PleasantのP、AmenityのAでAPAなんです。つまり「いつも気持ちのよい環境を」という名前の会社にしたので、環境の勉強を極めたかったんです。最終的には早稲田大学の大学院の博士課程を修了しました。博士ではないけど、勉強は全て修了しました。

山本:社長にとって素敵な男性とは?

元谷:頭のいい人。私は幼い頃から「頭のいい人は性格もいい」という理念というか哲学を持っているので。頭のいい人は自分の人生も大切にできる。自分を大切にできるということは、勉強して、理論武装もできて、素敵な人のはず。だから何があっても頭のいい人と結婚しようと決めていました。主人は出会った瞬間に、 “今まで会った中でいちばん頭のいい人!”って思いました。今もその信念は変わっていないですよ。やっぱり頭のいい人は話が分かりやすいし、性格もいい。やっぱり分かりづらいのは……ダメやろ?

山本:そうですね(笑)。でも分かりにくくなってしまうのも、また人間だったりするじゃないですか。

元谷:そのほうがオシャレに思えたりしてね。

——実は僕と康一郎さんとで、先日は歌舞伎町タワー、昨日は違う人と妙高高原のアパホテルへ泊まりに行ったんです。覆面調査ですね(笑)。で、今さっき、妙高高原から戻ってきたばかりなんですよ。

元谷:うれしい! ギネスブックに載った妙高高原のイルミネーションは見てもらえましたか?

——それを見に行ったんです。

元谷:(拍手)。私の長男がいまグループの社長をしていて、あれは100パーセント彼のアイデアと責任で作りました。上杉謙信の紋羽織の双竜の紋羽織をLEDで表現していて。あの近くに関山という小さな駅があるんですよ。そこのお神社に祭られている、関山神社の謙信公の歴史からいただいたモチーフなので。市長にもすごく喜んでいただけて。地域のお役に立ちたいという志が長男の中にあって。立派に出来上がった時は涙が出ましたね。「あんなにオムツを替えていた子が」って(笑)。

山本:僕は青森のアパにも泊まりました。ねぶた祭りの時に。嫁の両親が青森でして……あの、生意気な言い方ですけど、僕はアパに泊まると母性のようなものを感じるんですよ。

元谷:本当ですか? うれしい。鳥肌立ってきた(笑)。

山本:豪華過ぎず、栄養も考えてある。お母ちゃんが作ってくれた冷めないタッパーに入っているお弁当っぽい。

元谷:ありがとうございます。そう感じていただけるように努力をさせてもらっていますが、もう本当にうれしい……。

山本:浴場のお湯が出るボタンも、お湯が長めに、でも無駄には出ないようになっていて。

元谷:環境を考えて無駄に出ないんです。でもお母さんだから、息子に風邪はひかせないように(笑)。

山本:そうなんですよね。細部まで完璧で、無駄がない。

元谷:無駄はいけないけどケチはもっとダメ。だから母性なんです。

山本:浴場を出るとベンチがあって、それが斜めに付いていて「ここで寝ちゃいけないよ」と感じたんですけど。

元谷:すごい。それに気付いた人には初めてお会いしましたよ。

山本:だからアパ社長カレー(※レトルト。1個390円税込)も、「250万食達成!(※業務用含む。2017年3月現在)」とすごい数字を言われても、何の嫌味もなく受け取れる。

元谷:ありがとうございます。例えば帝国さんとかオークラさんとか、外資の大手とかって、カレーは千円以上が当たり前じゃないですか。でもうちは390円しかいただいてないんですけども、どこのホテルよりもコスパも味もいいと自負しています。一番美味しいのはアパ。でも、いちばん嫌われたのもアパ。分かり易いですよね。「ビジネスホテルが何カッコつけてんだよ。シティホテルの仲間入りとか狙ってんじゃねえよ?」という、古参のホテルさんからしたら、鼻つまみ者のイメージも正直あったと思うんです。でもアパが次から次へと建っていくので、もう、そうも言われなくなってきた。だから最近はオセロのように、アパ嫌いがどんどんアパ好きに変わってきている段階なんですね。

山本:僕、自分で泊まってみて、“アパでいい”っていうフレーズが浮かんじゃったんですよ。 “アパがいい”っていうゴリ押しじゃなくて、“アパでいい”っていう。

元谷:うれしいです。企業の出張族の方たちというのは、大半が必ずしも成果が約束されているわけではない。だから企業側もあまり出張費をかけられない。その点、アパはコスパに優れている。だから「アパは社長の理念が一流なんです」と日頃から私が言っているのも、もちろん嘘ではないんですが、何よりお客様が一流なんです。個人情報なので名前は出せませんが、各界の有名な方、著名な方にもたくさんご利用いただいています。

山本:自分で泊まってみると、とても納得のいく話です。

元谷:山本さんもそうですが、確かな目を持つ一流の人が、今まで都市ホテルに行ったけど、「でも、アパでいいじゃない?」と言って下さる。いま、日々その現象が起きている真っ最中なんです。それが“You’ll back.”なんです。

夢なんて見ているようではダメ

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山本:あと、アパはエレベーターの速度が速い。

元谷:そうなんですよ。「時は金なり」なんて学校で教えるからケチな人間になるんですよ。お金に換算する。違うんですよ。私からしたら、時は命なんです。“Time is life.”なんですよ。だから1秒でも速く上げて、1秒でも速く降ろして差し上げたい。1秒でも速くチェックインして、1秒でも速く出掛けていただきたいんです。一流ホテルではチェックインもチェックアウトも長い列を作るでしょ? うちはお客さまを信頼して、そういうものを全て省略した。自動チェックイン機を入れたのもうちが一番でしたからね。

山本:好きな数字はありますか?

元谷:ありますよ。自分の誕生日が七夕様なんですよ。でも正確には7月7日の夜中12時ジャストだったんです。でも、うちの親は、雨が降ったら織姫様は彦星様にお会いできないから「良縁が遠くなったらかわいそうや」と8日で届けたんです。でも後からまだ幼い私が、「イヤだ、彦星様にお会いできなくてもロマンチックだから7がよかった!」とごねたらしくて(笑)。だから戸籍上は7月8日だけど、7月7日で間違いではないんじゃないかと。だから7と8が大好きです。

山本:俺もそうです。ちょっと欲張っていて、ラッキーセブンでダメなら末広がりだと思っていて。よく力を借りますね、7と8には。

元谷:私と一緒だ(笑)。

——新幹線の席もそれで選ぶ?

元谷:それはいちばん前。忙しいので。こないだも新幹線に乗って大阪へ行って『生×カラ!』というカラオケ番組に出て。スポンサーもして審査委員長もしているんです。

山本:審査ってどんな感じですか?

元谷:私の一番好きな仕事。私、歌が下手だけど、一応、演歌歌手でもあるからね。

山本:それは噂で聞いています(笑)。

元谷:CDあげるよ。でも聴くと、胸、悪うなるよ?(笑)。

一同:(笑)。

元谷:30分番組で、素人の方に心温かく、母性を持って、あまり否定的なことは言わない批評をします。こないだも、私より10歳ぐらい上のすごくハンサムな人がすごく甘い声で。だから「あなたの人生がもろに出ていて、いいお歌をお歌いになりますね。いまも素敵やけど、若い時はよっぽどおモテになったでしょう?」と言ったら、顔がぱーっとバラ色になって(笑)。 “あ、いいことしたな”と思いました。

山本:男の人ってナルシストが多いじゃないですか。それに関してはどういうアドバイスを?

元谷:でも自分を好きにならずして人を好きになるのは難しい。人間は男も女もナルシストであるべきですよ。自分を大切にしていて、涙が出るほど自分が大好きなら、人様にも思いを馳せることが出来るはず。だから私はナルシストの人、大好き。愛おしい。これも母性かな?(笑)。 すべてプラス思考なんですよ。

山本:それでも嫌いなことってありますか?

元谷:あまりない。“逆境こそ光輝ある機会なり”。これは主人が中学3年の卒業文集で書かれた言葉ですなんですけど、まさにこれですね。ピンチは自分を磨いてくれる。

山本:中3で、ですか? ハードコアだなぁ。

元谷:小学校を卒業する頃はちょうど国連に日本が加入した年だったそうで、“世界連邦大統領になる”って書ききったそうですから。うちの主人はお父さまが病気で寝たきりで、主人が中学2年の頃に亡くなられた。だから家の柱を14歳からやってきたんです。まさにアドベンチャーライフを生で生きてらした、筋金入りの方なの。私と結婚してから1年後に、自宅を担保に1千万借りて、注文住宅から始めた会社が今の前身、アパなんです。でもね、これも書いてほしいんやけどね、アパは1回も赤字がないんですよ、46年。

山本:あとリストラもないんですよね?

元谷:一度もしていません。こないだ主人と二人で調べたら、これまでに2千億ぐらい納税していた(笑)。

山本:すごいですね。そして仲が良いですね。

元谷:うち、ずっと新婚ですから(笑)。でも金庫にはお金が1円もない。うちは貯金をしない主義なんで。権利書も入ってないし何も入ってない。会社の歴史だけを大切にしているので、お金はいらないんですよ、私たち。皆さんのおかげで信用がついて、いくらでもメインバンクでお借りできるから現金はいらないんです。だから私も、資産は少しあっても、貯金はほとんど持っていません。2、3年前やったっけ? テレビ番組で2年前に『聞きにくいことを聞く』という番組でタカアンドトシが一週間近く張り付いて、何が聞きたいのか思ったら、「すいません、聞きにくいんですが、社長、預金はいくら持ってらっしゃいますか?」って聞かれたんだよね。だから「え? 60万かな?」って答えた。ほんとに60万やったんで。彼ら、ひっくり返っていましたね。「僕より少ないの!? 嘘でしょ?」って(笑)。でも本当なんですよ。

山本:じゃあどうしても要るものは何ですか?

元谷:信用ですね。人間・元谷芙美子としての将来性を買っていただけるか、アパの将来性を買っていただけるかどうかが私の値打ちなので。お金なんて紙であり、金じゃないですか。どうにもならないでしょ? かつて代表が社長になった時、「お前は貯金しなくていい。わずかな給料しかやれないけれど全部遣いきれ。花咲かばばあになれ。そしてお前の人間性のあたたかさと会社の将来性を、部下のみんなやお客様に分かっていただけるよう貢ぎ通せ」とおっしゃったんで「はい、わかりました!」言うて。だからたまに部下とうまいもん食べに行って、靴下とかハンカチを買って。あとはスーパー行ってご飯買ったり、パンストや下着を買ったりとやりくりをして。下着が一番高い買い物かも。

山本:その日に着られる服はいつ決めるんですか?

元谷:一瞬で。出掛ける1分前ですね。閃きです。帽子も全部閃きで。

山本:まずはどのアイテムから?

元谷:下着からですね。下着はお洋服より良いものを着るのが私の主義なんで。さんまさんにも大ウケしたんだけど(笑)。「高そうないいの着てるやんか。オシャレして来てくれたんだね」って言ったから、「でも下着はもっと気合いを入れてるの!」って服をまくりあげようとしたら蹴られましたけど(笑)。聞きたい? 私のスリーサイズ。

山本:聞きたいです。

元谷:上から92、63、88。

一同:おおーっ。

山本:今、シルエットが思い浮かんじゃった。

元谷:見せてあげてもいいぐらい。嘘言わない。いつもボン、キュッ、ボンやもん。ナイスバディ。外見はイマイチやけど中身は悪くないと思うよ?(笑)。

山本:好きな色は?

元谷:赤と黒。でも大学の環境学を習っていた時にはテスト受けするようにオレンジって書きましたけど。

山本:かわいいですね(笑)。

元谷:ボランティアに通じる温かな色はオレンジなんで。「オレンジが大好きです。人様のお役に立てるよう、一生を捧げられるお仕事に誇りを持って」。アパのカラーはブルーなんだけど。

鳥羽:最近アパのカラーはオレンジっぽいイメージが入っていませんか?

元谷:そうなんです。でもこれは私の持論かもしれないけど、実は黒って赤よりも華やかな色なんですよ。喪服の黒もお着物で見るとちょっとの織り具合とか絹の分量とか染め具合で100色ぐらいあるし。

山本:そうですね、黒は多彩です。

元谷:今日は取材でセンスのいい皆さんからの取材だから黒にしてきたんだけど、講演活動の際はほぼ100パーセント赤ですね。大きい場所では何千もの人の前で話すので、遠くからもすぐにぱっとわかるように。私、高校2年の時に弁論大会で福井県1位になったの。

一同:なるほど。

山本:四時間の睡眠で夢は見ますか?

元谷:見ない。夢の中でも契約したり「ありがとうございます」とか言って何かをシミュレーションしているみたい。代表からも叱られます。同じベッドルームで寝ているから、「やかましい! 寝る時ぐらいは大人しくしてもらわんとくつろげない!」って。でも起きていても夢はいらない。そんな甘い人生はダメ。

山本:……すいません。俺、夢ばっかり見ているんですけど、どうしたらいいんですかね。

元谷:ダメダメダメ! 失礼やけどそれだけはダメ。こないだ福井県の山奥かどっかに講演で呼ばれて行った時に、私がサブメインで、わかりやすく言うととあるお方の前座で講演したのね。そしたらそのホテルに入った時に、でっかい字で“夢”って書いた紙が飾ってあった。私、いつも講演の内容を決めてないんですよ。壇上に立ってから考えるんで、ノー原稿なんです。で、“夢”という字が思い浮かんだから、「元谷芙美子先生です」、「私が社長です」って言ってシーンとなった時に「夢はいらない!」って言ったらみんなびっくりしちゃって。

山本:何だかアヴァンギャルドだなぁ(笑)。

元谷:しかも何でみんなびっくりしたかというと、その日のメインのお方が官僚だか何だか偉い人で、私が見たのはその方の演題が書かれた紙だったんですよ。 “夢に向かって”っていう。

一同:(笑)。

元谷:でも私はそんなのおかまいなしだから。しかも、その偉い方の“夢に向かって”という演題が書かれた鈴割りというか掛け軸みたいなのが、私が「夢はいらない!」って言った瞬間、ドーンと落ちちゃったんですよ。

——もう引きの強さがほとんどコントですね(笑)。

元谷: ほら、明石家かますやから。「きたきたきた! おいしいな~」って思っていました(笑)。

(続く)

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(プロフィール)

もとや・ふみこ……福井県出身。高校卒業後、福井信用金庫に入庫。元谷外志雄と結婚後、1971年、夫・外志雄が起業した信金開発株式会社(現アパ株式会社)の取締役を経て、1994年、アパホテル株式会社取締役社長に就任。 講演や歌手活動を行い、「強運」を売る「ふみこ携帯ストラップ」を作り自社ホテルで販売するなど、自社の広告塔として活動。「私が社長です」のキャッチコピーと派手な帽子やスーツの“正装”風の姿でメディアへの大量露出をはかり名物社長となる。2005年、法政大学人間環境学部卒業。2006年、早稲田大学大学院 公共経営研究科 博士課程修了。現在、東京国際大学客員教授、日台文化協会理事を兼任。

やまもと・こういちろう……1961年京都生まれ。東京育ち。学生時代からマガジンハウス「POPEYE」に編集・ライターとして参加。1985年にメンズスタイリストとしての活動を開始。エディトリアルとスタイリングのディレクションが出来るファッションエディターとして雑誌、広告を中心に数多くの作品を残す。近年はファッションブランドのみならず他種企業のブランドアドバイザーも手掛けている。2016年の企業広告ではクリエイティブディレクターとしてADC賞を受賞。

 

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