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2018.04.06 COFFEE PEOPLE ~ Vol.25 ジェイク・ウィンズ ~

毎月、各界のゲストとコーヒーを入り口に様々なトークを繰り広げていくCOFFEE PEOPLE。第25回目はアメリカのけん玉カンパニー”Grain Theory”のCo Owner / Creative Directorのジェイク・ウィンズさんです。

日本発祥のけん玉が、海を渡り、アメリカでストリートカルチャーとしてブレイクを果たし、その潮流が日本に逆流しているのはご存知でしょうか? ジェイクさんはそんな子どもから大人までを魅了するけん玉シーンを代表するスタープレイヤーなのです。

昨年12月に東京・渋谷で開催され、大盛況のうちに幕を閉じた「CATCH&FLOW 2017」のために来日していたジェイクさんがTORIBA COFFEEにやってきました。アメリカ人の彼はどのようなきかっけでけん玉に魅了されたのか? そして彼が考えるけん玉の未来とは? カルチャーに魅了された者がそれを受け継ぐ上での、多くのヒントにも溢れた会話が繰り広げられました。ぜひご一読下さい。

(聞き手:鳥羽伸博(TORIBA COFFEE代表)。写真:石毛倫太郎。構成:内田正樹)

 

守りたいからこそ伝統を壊す

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——今日はありがとうございます。このコーナーではコーヒーの話はあまりしないんです。ビジネスの話もあまりしなくて、どちらかと言えば表現やモノの考え方についてのお話をうかがっています。

「なるほど。じゃあまずは僕のバックグラウンドからお話ししますね。まずは僕がどうやってけん玉に出会ったか。僕はアメリカのテネシー州出身で、大学で映像の勉強をするためにサンフランシスコへ渡ったんですが、その頃の僕はインライン・スケーターだったので、そのコミュニティを通じて、2008年頃にけん玉と出会いました」

——ジェイクにけん玉を教えてくれたのは誰だったんですか?

「マット(マシュー・ライス)という、Grain Theory(※グレイン・セオリー“Small Batch, Big Idea”をコンセプトに掲げるハイクオリティなけん玉ブランド。2013年よりスタート)の共同経営者です。当時は彼もまだ始めたばかりでしたね。見てすぐに、とてもクリエイティブになれるおもちゃだと感じました。けん玉のクリエイティビティが、フィルムメーカーとして受ける刺激と自分の中でオーバーラップする部分があったので、これはやってみたいと思い、そこからどんどんハマってしまいました。で、ストリートでみんなとけん玉を見せ合ったりしてね。みんなでやれるというものハマった大きな理由でしたね」

——覚え始めの頃って、何かお手本があったんですか?

「最初はマットから習っていたんですが、嶋寺克彰さん(※2014年8月にデンマークで開催された国際大会の優勝者。日本けん玉協会7段)というけん玉業界では伝説的なプレイヤーのビデオをYouTubeで観たりしていましたね。彼は畳の部屋で頭に白いタオルを巻いてすごくストイックにけん玉をやっていた。ちょうどその頃、日本のレジェンドプレイヤーたちがYouTubeにビデオをアップし始めていたんです。

——じゃあ日本におけるストリートカルチャーとしてのけん玉もほぼその頃に始まっていたんですか?

「いえ、おそらくまだそうではなかったでしょうね。どちらかと言えば一人でストイックに技術を極めるような感じのトラディショナルなスタイルだったんじゃないでしょうか。やがて僕をはじめとするアメリカ人のプレイヤーもビデオを上げ始めて、そこからじわじわとこうしたスタイルが知られるようになったんだと思います」

——言わば“逆輸入”なんですね。

「日本に限ってはまさにそう言えると思います。そもそもけん玉というのは日本のトラディショナルな遊びであり、日本では“けん玉道”だったんですよね。“道”のけん玉なので、ルールがあって、精神統一があって、質実剛健といった雰囲気があって。

——階級も“段”ですもんね。

「そうですね。それを僕らアメリカ人が、もっとフリーでクリエイティブな解釈でとらえたことから、現在のスタイルが始まったんです」

——そういうものって、他にもアメリカであるのかな?

「日本が発祥ではないけれど、スキーが似たような例かもしれませんね。最初は綺麗に滑るスタイルだったけど、やがてトリックやバック転をし始めたのはやはりアメリカのフリースタイラーだったので」

——コーヒーにもサードウェーブという流れがありますよね。要するにスターバックスなどがセカンドウェーブ、ブルーボトルなんかがサードウェーブと言われていて。彼らは日本の喫茶店の文化をとてもリスペクトしている。コーヒー屋って、レストランよりも簡単に店を始められるじゃないですか。だから全ての店を一括りにするのも僕は間違いだと思っているんですけど、ともかくサードウェーブはいい材料を少量で仕入れて、自分たちで焼いて、焼き方も工夫して、店の内装も自分たちで作るという、自分たちのクリエイティビティを表現の場として広がっていったんです。

「なるほど。けん玉にしろコーヒーにしろ、長く続いたものを守るためには、ある意味、伝統を壊していくことがすごく大事だと僕は思います。けん玉も、良い意味で伝統を壊していくことで進化させることができると僕は考えます。それは最終的には、そのカルチャー自体を守ることに繋がる。そこが僕の大事にしているコンセプトなんですね。たとえば“Catch & Flow”というフリースタイルのけん玉大会は、それまで存在しなかったスタイルの大会でした。日本では渋谷のクラブを会場にして、DJブースを作って、MCが叫んで、バーカウンターでみんながお酒飲みながらけん玉の試合を見るという新しい試みでした。それが実現できたのも、それがカッコいいと思っている人たちが世界中にいて、いい意味で伝統を壊してきたからなんだと思うんです」

——正統派や保守派と、改革派や革新派がいるのは悪いことじゃないと思うんですよ。政治が良い例ですが、必ず相対すべきだし、両者が存在することで互いの存在理由が明確になることもあるじゃないですか。

「まさにその通りだと思います。互いの足を引っ張り合うとか、片方が片方を引きずり下ろすのではなく、けん玉の未来をけん引したいんです。僕はGLOKEN(※一般社団法人グローバルけん玉ネットワーク)という団体と長年一緒に仕事をしているんですが、GLOKENの代表理事を務めている窪田保は、ずっと(公益社団法人)日本けん玉協会の人間だったんですよ」

——何か流れがプロレス団体みたいですね(笑)。 

「僕は自分の好きなものができたら、その進化と一緒に歩みたい。例えばスケーターのコミュニティでは、自分のチームやカンパニーの服を着ていたら、街で通りすがっても“あ、あの服を着ているということはスケーターだな?”と分かるんです。それがきっかけで友達になって、コミュニティがどんどん広がっていく。その仕組みをけん玉に導入して、だからGrain Theoryはアパレルにも力を入れています。それを着ている人がいたら、絶対にけん玉をしている人だと分かるので。僕はけん玉の人口をもっと増やしたい。そして、もっといろんな人がけん玉のコミュニティに入ってきてほしいんです」

 

まず自分がハッピーであるというスタイル

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——(ジェイクさん持参のけん玉を見て)たとえばスケーボーだと後ろの板が削れていると、それがちょっとカッコいい。つまりそれだけ使い込んでいるとも言える。それがカッコいいという文化も、何となく日本っぽい。日本には郡上八幡というところに郡上おどりという33夜に渡って続く祭りがあって、なかでも徹夜おどりの期間は4日間に渡って踊り続けるんですね。その時は下駄を履いて踊り続けるにで、どれだけ下駄が削れたかがステータスになるらしいんです。

「それはすごいですね。けん玉も使い込めばダメージでボロボロになる。僕らはそれを“育てる”というんです。どれだけけん玉が“育ったか”を見せ合うのが、やはりステータスなんですよ(笑)」

——よくイギリスのツイードジャケットには、革のパッチが貼ってある。あれって本当はほつれてから貼るものなんだけど、新しいジャケットには最初から貼ってあるものがある(笑)。でもそれを買うのって、最初から削れている下駄を買うのと一緒ですよね(笑)。

「たしかに。もうボロボロになったけん玉を買うのと一緒だね(笑)」

——むしろこれ以上ボロボロにならないけん玉を買うみたいな話でしょう。男性って、使い込んだ道具とか、機能美に憧れますね。だからステッカーがいっぱい貼ったあるスーツケースを見るとちょっとアガるじゃないですか。でも、大して旅行していないヤツがピカピカのスーツケースに真似てステッカーを貼ったスーツケースはやっぱり違うだろうと思うんです。

「Pauser(ポーザー)という英語があって、Pause(ポーズ)からきているんですが、“見かけ第一”というか、実際はやっていないくせに形から入る、見せかけのポーズをするという意味なんです」

——日本でいうところの“丘サーファー”だ(笑)。

「まあ本当にけん玉をやらないのは何だけれど(笑)、まあとにかく僕はいろんなスタイルの楽しみ方があっていいと思っているんです。自分が楽しくて幸せならそれで良いというか。例えば僕のけん玉スタイルはちょっと特殊なんですね。で、けん玉にもトレンドの技がいろいろあるんですけど、最近、トッププレイヤーと呼ばれる言われる子たちがやるような難しい技って、あまり僕のスタイルに合わないし、そこまで興味もないんです。自分がハッピーに楽しめる。そのために好きな技だけをやるのが、僕の基本的なけん玉のプレイに対する考え方なんですね」

(※ここでジェイクさんがけん玉の技を披露)

一同 おおーっ!!

——楽しそうだし、余裕がありますね。そしてやっぱりストリートっぽいですね。

「最初のけん玉ワールドカップでは、宮島の厳島神社の高舞台でけん玉のパフォーマンスをさせてもらいました。神様に捧げるけん玉パフォーマンスです。素晴らしい機会でした。(※技を披露しながら)なめらかなフローを作るのが僕流のスタイル。でも考え方次第で、いろいろな表現ができるのもまたけん玉の魅力のひとつなんです」

——けん玉自体の素材の良し悪しや重さについては?

「素材と重さももちろん重要なんですが、最もこだわるポイントは「けん」のシェイプなんです。今日僕が持っているのはクリスチャン・アイネデターというプレイヤーのプロモデルなんです。だから彼を工場まで呼んで、じゃあどういう形がいいのか? どういう素材がいいのか?を全て聞いて、それを形にしたモデルなんです。ちょっとけん先が丸みを帯びていたり、lunar(=月面着陸)という技があるんですけど、空洞を作ることでけん尻が軽くして、技をキメ易くしてあるんです」

——けん先が丸くなっている理由は何ですか?

「先があまり鋭角に尖っていると、ミスをした時や玉に当たった時、その衝撃で平らになってしまうので。ちょっと丸みを作ることで耐久性も上がるし、玉にけん先がするっと入っていけるように丸くしてあるんですね」

——素人目にけん先が細くて玉の穴が大きいほうがより入り易いように思えますが。

「そういうトレンドもあって、そういう形を作るブランドやカンパニーもありますね。特に初心者にとってはけん先が細くて穴が大きいほうが簡単にできますからね。ただ自分の技術が上がってくると、次のアクションに移る時に玉が滑り落ちちゃうんですよ。だから10〜20本のけん玉を持っていて、それを技によって使い分けるプレイヤーもいますね」

——ちなみにアメリカにおけるで基準はあるんですか?

「いちおうけんの高さが17センチ以下をレギュラーサイズと定めています。特にけん玉ワールドカップで使用できるけん玉って、いくつかルールがあるんですが、特に“ダマボックス”という箱のサイズよりもけんが大きかったら使用できないという基準があって。あるプレイヤーのけん玉は、高さは大丈夫だったんだけど皿胴がちょっと太くて、ボックスに引っかかって入らなかったんだけど、無理やり思いっきり押し込めていましたね(笑)」

——無理やりでも通ればいいんだ? 相撲取りの新弟子検査みたい(笑)。ズルというか、けん玉に細工をしちゃうようなプレイヤーもいるんですか?

「大会によっては許している場合もあるみたいですけどね(苦笑)。まあプレイをする際に指で見えないように押さえたりするのはもちろんインチキだし失格になりますね。けん玉というのは本当にけんと玉のバランスが全てでして。例えばさきほどお話ししたLunarという技のために、けん尻を削って軽くするのはセーフです。そういうのは別にインチキでもなく、けん玉ワールドカップでもオーケーです。ただ、けん玉ワールドカップでは、けん玉に何か違うアイテムを足したら違反です。いずれにせよ、どんな技にも対応することのできるシェイプであることが良いけん玉のひとつの条件と言えますね。ひとつの技に特化したけん玉は、あんまりいいけん玉じゃない。もうひとつ、けん玉のデザイン面について言うと、やっぱりペイントされている玉か無地かの違いは結構大きいんです。ペイントされていると塗料のベタつきのせいで、けんがバランスよくなくても玉がピタッと止まっちゃう(苦笑)。それは僕のポリシーには反していて、自分はやっぱり無地のほうがいいですね」

——ラインを入れたりするのは?

「玉の穴の動きを目で追い易くなりますね。僕らプレイヤーは、皆さんが思っている以上に玉の動きをきちんと目で追っているんです。けん玉のパーツって、けんと皿胴と玉という3つのパーツに紐でできているんですけど、それぞれのパーツのバランスがパーフェクトに取れていることが大事なんです」

——けん玉は木製のものが多いですね。日本は多湿ですが、その影響は?

「大きいです。木は湿気を吸うので。ウグイスという技は湿気があるとすごくハマり易い(笑)。だからヒドいプレイヤーになると、プレイの直前にわざと水に落としたり舐めたりする人もいるんです。ただ舐めるまではいちおうアリにはなっていて」

——アリなんだ!?(笑)。

「時間制限があるのでその分タイムロスしちゃうので、それでもよければどうぞ、みたいな感じですね(苦笑)」

——ギターのように優れた有名ビルダーがいるんですか?

「その質問には“僕たちです”と答えたいですね。Grain Theoryでは数を量産する上で正確に作れるようコンピューターを導入していますが、品質管理や焼き印入れなどは手作業で行っています。そういう意味では、自分たちは維一、アメリカにおいて職人レベルのけん玉作りをしていると自負しています」

——日本には野球のバットの有名な職人さんがいて、すごい選手のバットって、だいたい同じ人が作っているんです。でもその職人が30本作ったとして、選手のほうもその中から2本かそこらしか選ばないそうなんです。

「すごいですね。Grain Theoryのけん玉はハイエンドなもので1本1万円ぐらいします。でもそのぐらい価値あるけん玉だという自負があります。だから目で見て手で触って、ダメだと判断したら廃棄します。自分たちが100パーセント良いと思ったものだけを市場に卸しています」

——ちなみにけん玉の寿命というのはどのくらいなんですか?

「プレイヤーにもよりますし、そのけん玉でどれぐらい、どんなプレイをするかでも違っていますね」

——紐は新しいほうがんいいんですか?

「まあ大会の前には新品に変えたりしますね。けん玉を首にかけていると、汗で湿ってプレイに影響するので」

——長さや素材は決まっているんですか?

「僕たちは決めていないですね。特にフリースタイルはどんな紐を使ってもいいんです。長さも自由です。紐なしはダメですが、極端にいうと1キロあってもいいし短くてもいいんです(笑)。紐が長いと、ジャグの技はやりやすいんですけど、リーチがある分、下から振って回転させるような技はもちろんやりづらくなるので、やっぱりバランスが大事なんですね。それと僕らが作るけん玉は従来のビーズではなくベアリングを玉の中に入れることで、技の最中に糸がよれるのを防ぐんです」

——では最後にジェイクさんの将来的なビジョンがあれば。

「Grain Theoryとしては、けん玉をより進化させたいですね。攻めたデザインやクレイジーなシェイプを作るかもしれない。けん玉デザインのプロ集団であることを、もっともっと極めていきたいと思います。そして僕個人の目標としては、繰り返しですがやっぱりけん玉人口を増やしたいですね。あと、教育現場におけるけん玉の存在価値について考えています。アメリカの学校に、僕が組み立てたけん玉のカリキュラムを持ち込んで教えたいんです。日本のけん玉について僕が感動したのは、子供たちが学校でけん玉をやっている姿でした。特にけん玉発祥の地とされている広島の廿日市は、小学校に上がると必ずけん玉が支給されるそうです。そうやって子供たちがけん玉を通して集中力を高め、動体視力を鍛えている教育の現場に感動したので、それをアメリカでも広めたいと思っています」

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(プロフィール)

ジェイク・ウィンズ……現在の世界的けん玉ブームを巻き起こした世界初のプロチーム “Kendama USA”所属のプロプレイヤーを経て、現在はGrain Theoryの共同オーナー/クリエイティブデザイナー。以前住んでいた自身のアパートの庭を“Kengarden”として多くのプレイーヤーに開放するなど、長年に渡りけん玉の普及に貢献している。陽気な人柄とトークセンスで、世界各地でのけん玉大会でMCを務めるなど、世界中のけん玉シーンをリードしてきたスターのひとりである。「けん玉ワールドカップ」や「CATCH&FLOW」といった大会でもMCを務めている。

 

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